短編映画「YORIKO-ヨリコ 」で主演を務める小野寺ずるさんにインタビュー。
難しい題材で主演を演じた心境、役への向き合い方、地元東北への想いなど、一つ一つの質問に真摯に向き合い語っていただきました。
Q この映画出演のオファーが来た時、どう思いましたか?またなぜ出演しようと思いましたか?
「今この役がくることに大切な意味がある」と、しっくりきました。
作品の題材にもともと関心を持っていたこともありましたし、私を必要としていただけているならこんなありがたいことはない、と出演することにしました。
また、ご連絡のやりとりが丁寧で、作品をしっかり作りたい、という熱を感じられたことにも背中を押されました。
Q マチュ監督の印象を教えてください。
やさしくて、画にセンスと確固としたこだわりがある方という印象です。
マチュ監督の、人を緊張させない空気、周りの意見や思いを前のめりに取り込もうとしてくれる姿勢、まっすぐなお人柄に大変助けられました。
監督が何かを見て「かわいい」とたまにつぶやくのですが、
その「かわいい」と言っているものには、独特の味と素朴さがあってその感性もまた素敵でした。監督の撮った映像を見るのが楽しみです。
Q 今回の作品は「オール東北」にこだわった作品だったと聞きました。
ずるさん自身も東北人として、今回のチームにどのようなことを感じましたか?
熱量がすごい、と感じました。
皆様お一人お一人にとってチャレンジングな状況だったと思うのですが、それを根性と強い意志と集中力をもって挑まれていました。チームの技術と仕事ぶりに感化されました。
私自身、東北に寄せる想いがあります。
特に東日本大震災以降は、常に頭の中に東北があります。
普段は東京で仕事をしていることもあり、こんな熱されたこん棒のような方たちが東北でガツンと作品を作っているという光景に大変勇気づけられました。
それと同時に、自分はどこに住んでもどういう環境でもみなさんのように熱と技術を発揮することができると言い切れるのか、という自問自答も芽生えました。自分を疑い戒められるよい機会にもなりました。
このチームからいただいた刺激は、今後の私の何かの助けになるような気がしています。
Q 難しい役どころだったと思いますが、役作りはどのように取り組まれましたか?
役作り、ということが私はいまだによくわからず、具体的に何かを作る、決めるということをせずにひたすら悶々として現場に入ったように思います。
ただ、ヨリコで扱う題材の本を読み、ドキュメンタリーをできるだけ見ました。
私はその題材について無知だったのでフィクションではなく、専門家が書いた本や、実際にそのことに直面した方達の映像をじっくり見ました。
しかし、当事者の方たちに感情移入はできても、自分のことと思い込むことはできても、おそらくどうやっても私はこの方たちのように"本当(切実)"にはなれないと、見れば見るほど感じました。
そういう状況だったので「何もわかってないんだからせめて真面目にもがけ、間違っても調子に乗るなよ」と心の中で自分を叱りつけながら取り組みました。
Q 最後にこの作品「ヨリコ」を通じて人々にどのようなメッセージを伝えたいですか?
この作品を見て、もしかしたら傷つく人や悲しむ人がいるかもしれない。
そのリスクを想像した上で、それでも作るからには何かをお渡ししなくてはいけない、と思いながら取り組みました。
その題材の「当事者でも専門家でもない人が何を渡せるの」と最中は恐ろしい気持ちでいっぱいでしたが、「当事者でも専門家でもない人」たちが、目の下にクマをつくって白目を剥きながら向き合い、願い、「どうかこの作品を」と発したということ。それこそがこの作品のメッセージだったのではないか、と終えてみて感じます。
この作品が、このメッセージ?が、観てくださったみなさまの何かのスイッチを押すきっかけになればと願っております。
<インタビュー :岡沼美樹恵>
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