2022年7月27日、「短編映画YORIKO-ヨリコ-」完成披露上映会がせんだいメディアテークにて開催されました。
コロナ禍で上映会を実施することには大きな不安もありましたが、「今、このタイミングで "人に集まって" 観てもらうことに意義がある。」という監督の強い思いのもと、前半後半合わせて150名もの方にお越しいただくことができました。
まずはスタッフ一同、心より御礼を申し上げます。
また当日予定がありお越しいただけなかった方や、遠方にお住まいの方々からは「追加上映はないのか」「どうにかして観られる方法はないか」とありがたいお問合わせをいただいております。
この件については、できる限りみなさまのお気持ちにお応えできるようスタッフ内で検討し、近いうちに良いお知らせができるようにいたします。
一夜限りの舞台挨拶では、キャスト、スタッフ、音楽家の熱い想いがほとばしり、一言ではその内容をお伝えすることができ兼ねるため、今日から数回に渡り舞台挨拶内容(言い足りなかったことも含め)、作り手の思い、お客様からいただいたご意見や感想などをレポートしていきたいと思います。
なぜこのテーマで映画をつくったのか、
監督と難しい役柄を演じた3人の女優によるトーク
第1回目の今日は「そもそもなぜこのテーマで映画をつくったのか、そしてテーマ上難しい役柄を演じた女優3人が何を感じ、この役と向き合ったか」について、お伝えしていければと思っています。
「2020年の春、フランスの家族に会いに帰る予定でした。」
マチュ監督のそんな一言から始まった、舞台挨拶前半の登壇者をご紹介します。
左から
MC:山口祥未(フリーアナウンサー)
監督/脚本/撮影/編集:モアンドロン マチュ
主演:小野寺ずる、福島和世、伊藤美果
*ここからは映画の内容の核に触れています。
視聴前に知りたくない方は、閲覧にご注意ください。
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2020年の春、フランスに2週間ほど帰省する予定だったマチュ監督は、2022年7月現在まだそれが叶わずにいます。
「もしかしたら家族に会えないまま別れが来てしまうのではないか?」と不安に襲われた時、状況は違えどたくさんの方が同じような不安を抱えていることを知ったというマチュ監督。
クリエイターとしてできることは、そんな世界に「人間にとって本当に大切なものとは?」という問いを投げかけることかもしれないと思い、今回の脚本に着想したと言います。
「認知症」をテーマに置いたのは、老いていくことは人間誰もが通る道で、世界共通の不変的テーマ。全員が自分ごととして受け取ってもらえるメッセージを届けたかったと話してくれました。
その監督の想いを受けた35歳ヨリコ役、主演の小野寺ずるさんは、難しい役どころに挑むため、オファーがあった直後から認知症について書かれた本やドキュメンタリーをできるだけ見て勉強をしたそうです。
それでも「当事者の方に感情移入はできても、おそらくどうやっても私はこの方たちのように"本当(切実)"にはなれない」事実と葛藤しながら撮影に臨んだと振り返ってくれました。
85歳のヨリコを演じた福島和世さんは、ご自身も85歳一人暮らしという状況で、人と会えないこの3年間は自身も認知症になってしまうのではないか、という不安を抱えながら生きていたと言います。
その中でも元気で健康でいられる秘訣を問われると「お洒落をしたり、ボランティア活動をしたり、演技のレッスンを受けたりと、日々新しいことにチャレンジすることが元気の源です」と満面の笑顔で答えていただきました。
ヨリコの娘、65歳ユキコ役を演じた伊藤さんは、20年前に認知症で母親を亡くした経験を涙ながらに語っていただきました。
「しっかりしていた母親が徐々に分からなくなっていくことを、当時は受け入れることができなかった。それをずっと後悔していたけどこの作品を通じて、ラストシーンで母役のヨリコに言葉をかけられた時、実の母親と出会い直せたような気がして自然と涙が止まらなかった」と語っていただきました。
撮影中は、これでもか!という位たくさんの感情をぶつけ合ったという監督と小野寺さん。
それくらい互いが本気で向き合い理解し合った時間だったということは、この写真の笑顔を見れば分かるような気がします。
その光景を見ていた伊藤さんは「いくらバトルしているように見えても、その根底にあるのは本当にあたたかい愛だった。」と語り、福島さんは「本当にみなさん優しくて、わたしにとって宝物の時間でした。」と会場を和ませてくれました。 そんなわけで、短編映画「YORIKO-ヨリコ-」上映会レポート①はこの辺で。
次回は「オール東北でつくった意義とこれから」というテーマで、舞台挨拶後編をレポートできればと思っています。 それでは!
<写真:窪田隼人>
上演時間20分で、本当に深くてダイナミックな作品でした。